忘却の勇者

オレオは黒刀を鞘に戻して、一歩下がった。


コーズの実力は無知数だが、魔物相手に臆することなく立ち向かう様は本物だ。


きっと大丈夫。いや、絶対に大丈夫。


自分にそう言い聞かせる。


コーズはオレオを一瞥すると、ありがとうと呟き視線を戻した。


腰のポーチに片手を突っ込み、短刀を取り出す。


ダガーと呼ばれるそれを強く握り締め、狙いを定める。


夢魔は不気味に微笑むと、艶のある銀髪を掻き揚げた。


「あら、お兄様がお相手してくださるの? けれど可愛い可愛い妹のお顔を傷つけることが出来まして?」


余裕の表情。だが次の瞬間、ヒュッと大気を裂きながら、短刀が夢魔の眉間に突き刺さった。


「ぎゃああああ!」


悲痛な悲鳴が木霊する。
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