忘却の勇者
無論解読済み。後は発動のための魔力を練り上げ放つだけ。
「最終警告だ。無能な民など切り捨て、我らと共に理想の世界を作ろうじゃないか」
「笑わせるな下郎。貴様のような腐った人間が統べる世界など、泥船に身を委ねるようなものだ」
「……言ってくれる」
禁書から飛び出した光の粒子は、一カ所に集中し剣の姿に早変わる。
眩い光を放つ金色の剣。
刀身から溢れだす膨大な魔力は空振を起こさせる。
存在するだけで周囲に影響を与える金色の剣。
イアンは剣を手にすると、禁書を閉じ懐にしまった。
「九十九の禁書の内、最強の攻撃力を誇る喪失魔術・魔聖剣。大賢者マーリンが作りだし、魔王殺しの聖剣のベースになった光の刃。
本物の聖剣と違い邪を払うことは出来ないが、あらゆる物理的障害を断ち切ることが出来る最強の剣。その意味がわかるか?」
「つまり、この結界ごと私を刺し殺すというわけか」