忘却の勇者

それでも魔王は意に介す素振りは見せず、二の句を続けた。


「だが奴らの実力では童を完全に復活させることは出来なかった。力はおろか、肉体すらこの様だ」


魔王は続ける。


「今の童には、世界を破滅させる力などない。さらに中途半端に復活させられたせいで、力を蓄えることも出来ぬ。無力という言葉がピッタリじゃな」


「だがお前は魔王として鎮座している。力がないとは言わせない」


「言葉の綾というやつじゃな。戦闘力という意味では、童は無力じゃ。だが腐っても王は王でな。貴公らは意外だと口にするだろうが、人間と違い魔物の忠誠心は揺るぎなき強固なものだ。
力を失っても尚、魔物達は皆童の命を聞く。そこで四聖官の老人共に良いように利用されたのだ」


「利用?」


「喪失魔術・死者蘇生で復活させられた者は、術者に絶対服従を強いられる。貴公も馬鹿じゃない、ここまで言えばもうわかるだろう?」


なぜ四聖官が危険を冒してまで、魔王を復活させた理由がわかった。


魔王を牛耳れば、その配下にいる数え切れぬほどの魔物達を手駒にすることが出来る。
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