忘却の勇者
「同意見?」
「童を殺せ」
覇気が籠った問いに、オレオは突き付けていた黒刀を下ろしてしまった。
「童が死ねば、魔族達を縛る者はいなくなる。このまま奴らの操り人形になるつもりは毛頭ない」
「今までの罪を認めるのか?」
「勘違いするな。童は王として魔族のためにこの身を捧げるのだ。そもそも罪とはなんだ?
童は同族の未来のために人間を殺した。罪の意識など持ち合わせるわけがないだろう。それはお前達人間側もそうであろう?
過去の贖罪など無意味だ。それよりも今は未来のことを話そうじゃないか。君も、過去より未来の話をしたいだろう?」
こいつ、勇者の秘密を知っているのか。
ニンマリと口角を吊り上げるその様に、心の中で舌打ちをかます。
嗚呼そうだ。僕に過去の話をしても意味がない。
元より未来を勝ち取るためにここにいるのだ。
過去の贖罪など、そんな話をするために命をかけてきたのではない。