忘却の勇者

ここが村のはずれで良かったと、コーズは内心ほくそ笑んだ。


夢魔の眉間からには赤黒い血がドクドクと流れ出る。


短刀を乱暴に引き抜くと、鬼の形相でコーズを睨みつけた。


そこに可愛らしい妹の姿はない。


「きさまぁ! 実の妹の顔に短刀を突き刺すとはなにごとだぁあああ!」


「黙れ! 俺のミウは世界で一人! 唯一無二の存在なのだ!」


ロリコンめ。


コーズに聞こえないよう、小さくオレオはツッコんだ。


俺のミウとは痛すぎる。気持ち悪いからもうちょっと離れていよう。


一歩後ずさり。コーズの株はみるみる下降の一途をたどっている。


「この……ロリコンがぁ!」


どうやら夢魔も同じことを思ったらしい。誠に残念な男である。
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