忘却の勇者

油断していたこともあり、弾かれた衝撃で一歩後ずさる。


結界魔法? でもさっきまではそんなものはなかったはず……。


魔王とゲームをしている時、喉元に切っ先を向けた時、確かに結界は存在していなかった。


死にたがっている人物が、わざわざ結界を張ったりするのか?


命惜しさに咄嗟に発動させたにしても、黒刀を押しのけた力は凄まじいものだった。


あれはただの結界魔法じゃない。


あれは―――


「喪失魔術・絶対守護領域。対象が危機に晒された時、オートで発動する結界魔法。物理、魔術、近代兵器、あらゆる攻撃を防ぐ最強の盾だ」


「喪失魔術……まさか四聖官が!?」


「ご名答。この結界がある以上、童を傷つけることは絶対に叶わぬ。その威力も保証済みじゃ」


魔王は言う。


「先代の勇者が三日三晩攻撃し続けても、傷一つ付かなかったからな」
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