忘却の勇者

四肢に力を入れ立ち上がろうとした瞬間。


「ッ!?」


身体の中心に、激痛が迸った。


視線を落とすと、白銀の剣が腹部から突き出ている。


滴る鮮血。


息を吐くと血液が雑じり、口の中が鉄の味で支配される。


目の前の人物は確かに倒れている。


だが、信じるしかないだろう。


「油断したな。イアン賢者」


背後に立つ人物が、サイであるということを。


「馬鹿な……分身……?」


口にしながら、それはないと否定する。
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