忘却の勇者
「それでは……私が戦って、いたのは……」
「貴方が作りだした幻だ。いや、実体のある幻というべきか」
「いつ……幻術をかけた!」
「手の内を明かすとお思いですか?」
白銀の剣を引きぬくと、傷口から止めどなく血液が溢れ出る。
イアンは手を翳して治癒魔法を施すが、魔力も残り少ない。
出血を押えることが出来たが、完全に傷口を塞ぐことは叶わなかった。
最早戦う余力はない。
まさかたった一人の若者に、三人の四聖官がやられるとは想像だにしていなかっただろう。
諦めが先行し、生きる気力は削がれていく。
だが、最後に一つだけ聞きたいことがあった。
「なぜ、戦う……無力な民を助けた、ところで……」