忘却の勇者

「これが大賢者マーリンが童を倒すために編み出した喪失魔術だ。全ての魔術の礎になったこの術に対抗する手立てはない」


この世に溢れたありとあらゆる魔術は、全て喪失魔術がベースとなっている。


魔術の心が少しでもある者が簡単に使えるようにアレンジを加えられた……謂わばこの世界の魔術は全て、喪失魔術の劣化コピー。


勿論それは、オレオがコーズに託されたあのカギも例外ではない。


いくら強力な解除魔法を使えたとしても、本元の魔術を勝るほど出力は得られない。


魔術の類が通用しないのなら、力技で押し切るしか手立てがない。


勇者である自分の力とこの黒刀があれば結界を破ることが出来る。


だがオレオの思惑は大きく外れることになった。


「お主弱いな。先代は丸一日打ち続けたが、疲労の色など一切見せなかったぞ」


「はぁ……うるさいっ……!」


考えたくない。


今はただ、結界を破ることしか考えたくないのに。
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