忘却の勇者
魔王は笑みを送る。
なんの感情も籠っていない、無機質な笑みを。
「実に残念だ。童は今日も死ぬことが出来なかった」
「……嘘を付け」
「嘘じゃないぞ。童の心は憂いの気持ちで一杯だ」
いけしゃあしゃあと言ってのける。
それでも反論するだけの体力も気力もなく、オレオはその場に崩れ落ち、息を荒く表情を歪めた。
―――結局僕は、また何もできないのか。
魔王に傷一つ負わせることも出来ないまま、多くの人々が無意味な争いを続け死に絶えていく。
その様を見守ることしか出来ないなんて……。
でも、こんなところで手を拱いている場合じゃないんだ。
マリとレインを助けに行かなくちゃいけない。