忘却の勇者

魔王を倒したことをケイに報告して、全ての事実を伝えないといけない。


戦争を止めないといけないんだ。


こんなところで……こんなところで……!






感情を奥に閉じ込め、闘争本能だけを開放する。


漆黒の闇に染まった瞳は目の前の敵を捉え、静かに立ち上がると拳を強く握った。


雰囲気の変化を読み取り、魔王はヒューっと口笛を吹く。


「ほぅ、純血種の覚醒か。意図的に引き起こすとは、なかなかやるじゃないか」


「……口を慎め」


お前はこれから死ぬのだから―――


チャンスは一度きり。


結界を破り聖剣を叩きこむ。

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