忘却の勇者

先ほどとは明らかに違う。


意思と意思がぶつかりあう振動が、ひしひしと伝わってくる。


オレオも手ごたえを感じていた。


感じてはいたが、その表情は苦しいものだった。


守護者の危機を感知し、結界が真の力を開放する。


オレオの攻撃を危険とみなし、結界自身がオレオの力を押し返そうと魔力を放出し始めたのだ。


力が互いに反発しあい、その余波をオレオの拳がモロに喰らう。


摩擦熱で皮膚は蒸発し、筋肉も焼けただれ既に骨の一部が見えている。


まだだ。まだイケる。


痛みなどない。いや、痛みを感じないほどの状態になっている。


ならば好都合だ。右手が使い物にならなくなるまで、結界を攻撃する事が出来る。


焦げ臭い匂い。一瞬で大気に消える血潮。

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