忘却の勇者

結界の衝撃は接触面だけでなく、右腕全体に伝わりダメージを与えて行く。


指の第二関節と第三関節の間の肉が完全に消え去り骨が露出。


腕の骨だけでなく筋肉も何本が切れたのか力を込める事が出来ず、オレオは仕方なく右手を下げた。


右腕はもう二度と使えまい。


それでもオレオの双眸は、ある一点を見過ごさなかった。


結界にヒビが入っている。


後一撃。後一撃入れれば、結界を破れる……!


右腕は使えない。左腕も失えば、聖剣を扱うことが出来なくなる。


そうなれば、残る選択肢は一つしかない。


一歩距離を置き、右足を軸にして左足をヒビが入っているポイントに向かって蹴りあげる。


結界の悲鳴が再び木霊する。


一度傷がついてしまえば、耐久力は一気に低下する。

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