忘却の勇者

それでも結界の抵抗は変わることはなく、腕同様オレオの左足にも猛威をふるう。


足の感覚も既にない。


指先から白い物が見えているが、見て見ぬふりをし、結界の破壊のみに全神経を集中させた。


もう引けない。引くことは許されない。


四肢を失っても魔王だけは……!


―――爪先が結界内に侵入する。


最後の力を振り絞ると、音を立てながら結界は粉々に粉砕し、パラパラと破片が地に落ちた。


魔王の涼しげな表情が目に入ったが、そんなことはもう気にしない。


彼も倒されることを望んでいる。


ならば自分がその願いを聞き入れてやるだけだ。


結界を破壊した左足は、形だけを残しその機能を為していない。


地べたに這いつくばるオレオは、背中の聖剣に左手を伸ばすと、柄をしっかりと掴んで逆手に掴み直す。
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