忘却の勇者
だがそれを掴むこともなく、オレオは顔を伏せ沈黙を貫いた。
茫然自失。
頭の中は真っ白で、目の前の現実を受け止めきれずに硬直する。
「僕は……」
僕は何も出来ないのか。
勇者の血を引く者なのに、人一人救うことも出来ず。
忘却の彼方に過ぎ去った約束も果たせぬまま。
ここで世界の終わりを見つめるだけ―――
無音の世界に音が響く。
コツコツと足音も耳に届き、オレオは反射的に音のする背後へ顔を向ける。
漆黒のローブを纏い、眼深くフードを被った青年の姿。