忘却の勇者

自重気味に微笑むと、オレオは唇を噛みしめた。


結局、僕には重すぎた使命だったのだ。


魔王を倒し世界を救うなんて、不可能だったんだ。


「そうだな」


低い声でサイが答える。


彼は金色の剣を作り出し、空間転移の魔術を使用する。


一瞬で消える姿。


再びサイが姿を現した先は、玉座で寛ぐ魔王の背後。


金色の剣を両手で構えると、


「全てを終わらせにきた」


金色の刀身は、魔王の血によって紫色に染まった。


王座ごと魔王の身体をなんなく貫いた金色の剣は、細かな光の粒子となって大気に溶ける。

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