忘却の勇者

「魔聖剣? それはイアンが……」


「イアンは敗れた。お前の存在理由は消えた」


「ではお主が例の……とんだイレギュラーだとは聞いていたが、まさか童に刃を向けるとはな」


痛がるそぶりを見せず、魔王は淡々と言葉を紡ぐ。


サイは魔王の前に立ちふさがると、その幼い顔を一瞥し踵を返す。


何をどうなっているのか理解出来ないオレオの元に、サイがゆっくりと近づくと、聖剣を蹴り飛ばし柄の部分をオレオに向けた。


「トドメを刺せ」


たった一言落とされた言葉。


オレオは聖剣に手を伸ばすが、思いとどまりサイを見上げる。


「貴方は一体……」


何を考えているのかわからない。何を企んでいるのかはわからない。


魔王に手を下したということは、少なからず味方なのは間違いないだろう。
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