忘却の勇者

でも彼は四聖官。魔王を裏で手引きした諸悪の根源。


オレオは事実を知らない。


サイがこの計画に携わっていることを。何を想い何を考えているのかを。


だから彼を百パーセント信じることは出来なかった。


否、信じてはいけないのだ。


「勇者である君が倒すことに意味がある」


サイは右手をオレオの頭上に翳すと、オレオの身体は橙色の光に包みこまれる。


魔力の光に包まれて、身体の傷が消えて行く。


二度と使い物にならないだろうと思っていた手足の傷がみるみる内に回復し、痛みは消えて感覚も取り戻す。


数分も経たず傷口は完治し、手足の機能は完全に復活した。


「……貴方を完全に信じることは出来ない」


聖剣を素早く掴み、軽く構えて牽制するが、サイは毅然とした態度でこう答えた。

< 555 / 581 >

この作品をシェア

pagetop