忘却の勇者
「勇者も魔王も四聖官も、所詮は私の掌の上だったということだ」
「言っている意味がわかりません」
「今は言い争う時じゃない。そうだろう勇者殿」
身を翻すと、魔王の姿が視界に入る。
そうだ。もう形振り構ってる場合じゃないんだ。
サイが何を企んでいるかはわからない。
わからないが、今こうして魔王を打ち取るチャンスが巡ってきた。
サイの行動に裏があったとしても、このまま魔王を野放しにしてはいけない。
少なくとも、魔王だけは倒さなくてはいけない。
己の使命のために、仲間の意思のために。
ならばサイの掌で踊ってやる。
魔王を倒す。ただその役目を果たすために……!