忘却の勇者

夢魔を祈るように両手を合わせるポーズを取る。


「離れろコーズ!」


オレオの叫びも、後一歩遅かった。


コーズの手から刃が離れると、彼の意識は飛び、身体は地面へと崩れ落ちる。


オレオは透かさず抜刀して夢魔に威嚇をするが、奴は高らかと笑い声を上げた。


精神支配魔法の発動条件、そのキーとなるものは術者の体液。


夢魔は己の体液を媒体として、対象者の精神へと入り込む。


靴から染み込んだ血液がコーズの足の裏の皮膚に触れ、そこから魔法が発動してしまったのだ。


「お兄様の魂も私の物になりましたわ。お友達なら、仲良く一緒に死んでやってくださいな!」


地面にちらばった短刀を掴むと、オレオに向かって勢いよく投げ飛ばした。


短刀には夢魔の血がたっぷりと染み込んでいる。


オレオは黒刀で弾き飛ばすが、その拍子に血液が飛び、頬に数滴付着してしまった。
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