忘却の勇者

「仮に私が無実だと証明されたとしても、四聖官の地位も権力も最早ないに等しい。無理に組織を維持して世界の批判を浴びるくらいなら、いっそ全員まとめて処分した方がネシオル王国の被害は少なくて済む。王府の判断は正しいさ」


だとしても。と、サイは続ける。


「ネシオル王国に恨みを持つ者。魔法技術を奪おうと企んでいる者。この国は敵が多い、四聖官という軍事力を失った今、この国は破滅の一途を辿るだろう」


それが現実。それが事実。


元凶を倒した今も、戦いの火の粉は燃え移り拡がっている。


「そんなことはさせない。僕の眼が黒い内は絶対に!」


「確かにお前は英雄だ。だが、お前達一族の末路を忘れたわけじゃあるまい」


オレオは口ごもる。


反論など出来なかった。


戦の英雄は、平和な世では危険分子に他ならない。


強すぎる力を保持するが故、恐れられ蔑まれ、世界から孤立される。
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