忘却の勇者
サイの強すぎる魔力に、手錠の魔封石がやられてしまったのだ。
逃げようと思えばいつでも逃げられる。
それでもサイは、この場にやって来た。
昨夜の出来事を思い出す。
何が起きても動揺はしない。ありのままの現実を受け入れるしかない。
サイの覚悟を、決意を……。
裁判は先に行われた三人と同様な展開で、淡々と行われて行く。
サイは一言も喋らずに、事の成り行きを見守っている。
裁判といっても、彼ら四聖官に行われている裁判は通常のそれとは違い、被告人であるサイに弁護士は付かず、裁判長と十人の裁判官がいるだけで、裁判という形をギリギリで保っているだけである。
事実上の八百長裁判。判決は既に決している。
淡々と口上を読み上げる裁判長。このまま判決まで持ち込まれるかと思っていたが。
「では、判決を……」