忘却の勇者

判決を読み上げる瞬間、事件が起きた。


「……茶番だな」


サイを中心に突風が巻き起こる。


裁判官や傍聴席に座っていた関係者は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。


オレオやケイなどの手誰は突風に耐えているが、余りの風圧に身動きは取れそうにない。


さらに頭上から稲妻から降り注ぎ、天井は崩れ落ちて蒼い空が拓けると、手錠を外したサイは空に向かって浮かび上がった。


突風も収まり、各々が武器を手にする。


「この程度の枷で私の力を封じられると思っていたのか? 薄汚れた老人共と一緒にしてもらっては困る」


騒ぎを聞きつけた兵士が銃を片手にやって来て、銃口を天に向ける。


だがサイに銃弾が届くとは思わない。


下手に手を出したら殺されてしまう。


ケイが「やめろ!」と声を荒げるが、兵士の方が一歩早かった。
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