忘却の勇者

禁書の解読は終えており、その構成も少年には伝えていた。


後は喪失魔術発動のための魔力を注ぎ込めばいいだけだが、それでも莫大な量の魔力を消費する。


仮に扱えなかったとしても、交渉材料には使えるはずだ。


そう思い手渡した禁書だったが、少年には荷が重すぎる代物だった。


「レイン、これからお前は一人で生きていけ」


突然の発言に、レインは目を丸くして小さく声を漏らす。


年端もいかぬ少年に対して残酷な言葉。


だがレインはその言葉の意味を理解して、首を横に振った。


「嫌です」


「ならん。四聖官が戦犯になった今、いずれ儂の元にも刺客が現れる。お前は強い、一人でも十分生きて」


「ふざけないでください!」


アモスの言葉を遮るように、オレオは声を荒げた。
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