忘却の勇者
記憶と想いと宿命と

「やはりそういう手筈だったか」


ネシオル王国王宮。バルコニー。


夕暮れ時の時間帯。バルコニーから見える城下町は、夕日によって赤々と揺らめき、後の漆黒を告げている。


紅く染まった人影は二つ。


王宮に招待された勇者オレオと、使者として来国している鉄血の十三騎士ケイ。


「それで君は、これからどうするつもりだい?」


ケイの問いかけに、オレオはバルコニーの柵に背中を預けこう答える。


「正直わかりません。魔王を倒して戦争も水際で食い止めることは出来たけど、それは結局サイ賢者一人が重荷を背負っただけで、なんの解決にもなってません。
サイ賢者がいなくれば、また戦いの輪廻が回り始まる。だからそうなる前に、自分に出来ることはやってみようと思ってます」


例えばと、オレオは笑みを浮かべながら続ける。


「アモール帝国と仲良くなるとか」


二カ国の血の歴史は、オレオも良く知っている。

< 575 / 581 >

この作品をシェア

pagetop