忘却の勇者
まして魔王復活計画のことも世界中に知れ渡った今、王国と帝国が友好的な関係を結ぶことなど現時点では不可能だと断言出来る。
しかしその不可能を可能することが出来たなら?
休戦ではなく終戦を迎えることが出来たなら?
大きな争いの火種が消えれば、その火の子が他に燃え移ることはなくなる。
大国の平和と安定は、そのまま周辺諸国へ還元される。
平和への架け橋になれる人物は、魔王という人類の敵を討ったオレオと、図らずも勇者と繋がりを持ったケイの二人のみ。
「和平交渉か。だがその道は、君が考えている何倍も険しいものだぞ」
「でもやらなくちゃいけない。サイ賢者が作ってくれた平和の時を、僕達が紡いでいかないと。でしょ?」
「……そうだな」
純粋で純直な想い。勇者の言葉に裏などない。
「それが残された者のやるべきことなのかもしれないな」