忘却の勇者

だからマリは生きている。


生きているという保証はないが、逆に死んでいるという証拠もない。


マリのことだ。きっと何食わぬ顔で、ひょっこり現れるに決まってる。


いやーあの時はまじで死ぬかと思ったよぉって、笑いながらオレオの前に現れる。


「コーズとマリ、二人の記憶も僕が紡いでいかなくちゃ」


獣兎の耳がピクリと動く。


大きな瞳がオレオに向けられると、オレオは屈託のない笑みを獣兎に送った。


「マリの捜索、手伝ってくれる?」


ウサギは鳴かない生き物だ。


その代わりに、獣兎は大きな耳を上下にパタパタと揺らしてスッと立ち上がる。


新たな仲間。可愛らしい外見とは裏腹に、なかなかやってくれそうな雰囲気が漂っている。


「僕も頑張らなくちゃ」

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