忘却の勇者
ふと、掌の鍵を見つめた。
漆黒の異形な鍵。コーズの家に大体伝わる大切な家宝。
このまま自分が持っていて良いわけがない。
それにまだ戦後のゴダゴダに巻き込まれ、彼女に会うこともコーズのことを知らせることも叶わなかった。
会わなくてはいけない。
マリの捜索よりも、和平交渉よりも、まずオレオがやらなければならないことがある。
「ミウちゃんにこれを返しても、獣兎は存在して……」
言葉の途中で停止した主人に、獣兎は顔を近づけて鼻をヒクヒクと動かしている。
オレオは掌にある鍵に視線を落とし、覇気のない声色で言葉を紡いだ。