忘却の勇者

傍から見れば、変態男に襲われている幼女の図である。


ある意味魔物よりもやっかいだ。警察を呼ばないと。


「このロリコン野郎」


オレオは堪らず毒を吐いたが、


「ロリコンじゃないもーん。シスコンだもーん。なっ、ミウ!」


もう溜息しか出てこない。


熱すぎる兄妹愛を終始無言で見物していると、やっと満足したのかコーズがミウから離れてこちらに向き直った。


さっきまでのデレ顔とは打って変わって、真剣な面持ちになっている。


「オレオには世話になったな。ありがとう。けど、お前はいったい何者なんだ?」


夢魔の精神支配を見破った時点で、自分の正体に疑問を抱くのは時間の問題。


すでに覚悟を決めていたオレオは小さく深呼吸すると、徐に口を開いた。


「……僕の名前はオレオ=カリバーン。父の兄、伯父に当たる人物の名はアーサー=カリバーン」
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