忘却の勇者
命の保証などない。それ以前に、魔王に辿りつく前にやれてしまう可能性だって十二分にありえる。
オレオは真剣な眼差しをコーズに突き刺す。
お人よしもここまでだと言うように。
「僕が言うのもなんだけど、この旅は遊びじゃないんだ。命を落とすことだってあるし、仮に助かったとしても無傷という保証はどこにもないんだよ。その場の感情で流されちゃ駄目だ。コーズを連れてくことなんか出来ない」
「オレオ……」
コーズが近付き、オレオの頭に片手を置く。
分かってくれたのかと思い顔を上げると、ワシャワシャと思いっきり髪をグシャグシャにかき乱された。
力一杯やるもんだからちょっと痛い。
やめてやめてと叫ぶと、コーズはようやく手を止めた。
「お前みたいなチビッ子が一人で旅なんか出来るか。魔王に会う前に道に迷って野たれ死ぬのがオチだってーの」
「んなっ!? 僕だってもう十五だ。一人旅ぐらい出来る」