忘却の勇者
「私たちの親が盗賊に殺されたのは知ってますか?」
「うん、大体の話は聞いてる。両親が殺されて、生き残ったのはミウちゃんとコーズの二人だけなんでしょ」
「実は……殺されたのは親だけじゃないんです」
口元にまで運んだマグカップが止まった。
ミウは伏し目がちに続ける。
「弟も殺されていたんです」
驚きはしたものの動揺はなかった。
妹がいることだって、この家に着てからはじめて知ったのだ。他に兄弟がいてもなんら不思議ではない。
それによくよく思い返せば、弟云々とコーズの口から聞いた気もする。
けれどなぜ弟の話をするのかは、その意図だけはまったく読み取ることが出来ない。
三日月に雲がかかる。
月明かりは途絶え、もうミウの表情を読み取ることはもう出来ない。
「複雑な事情があって血の繋がった本当の弟じゃないんですけど、私もお兄ちゃんも実の兄弟のように可愛がってたんです。だけど……」