忘却の勇者
言葉が詰まる。
無理に喋らなくていいよと制したが、ミウはかぶりを振って続きを語る。
「私とお兄ちゃんはなんとか逃げ出したけど、弟は逃げ遅れて……。お兄ちゃん自分を凄く責めてた。俺のせいだ。俺が守らなくちゃいけなかったのにって」
大切な人を守ることができなかった。
その悲しみと悔しさは計り知れないものだろう。
オレオはマグカップを強く握り締める。
まるでなにかを忘れ去ろうとするかのように。
悪寒が走る。
明るい好青年のコーズにそんな過去があるとは露にも感じなかった。
感じさせないほど、彼は明るく振舞えるほどの強さを持っていた。
けれどなぜミウは自分にそのことを話すのだろうか?
その疑問はすぐに解決することになる。