忘却の勇者
「信じられないと思うけど、オレオさんって弟に凄くそっくりなんですよ」
「え? 僕が?」
「はい。顔も髪型もそっくり。違うところは髪と瞳の色くらいかな? 背が低いところも似てますね」
うふふっと小さく微笑む。
最後の言葉が大変気になったが、オレオはツッコミの言葉をなんとか飲み込んだ。空気を読んだのだ。
「だからお兄ちゃん、オレオさんと弟を重ね合わせて見ているんだと思います。オレオさんと旅に出るって言ったのも、きっと弟を助けられなかった罪の償いだと思うんです。あくまで私の推測なんですけどね。困っちゃいますよね。オレオさんはオレオさんなのに」
雲の隙間から三日月が覗く。
ミウの表情は憂いを帯びていて、オレオは視線を逸らすと黙って夜空を見つめていた。
コーズがオレオに対してやけに親切にしていた意味がよくわかった。
もともとそういう性格なのだろうけど、オレオを亡き弟と重ね合わせていたのだ。それしか理由が見つからない。
……だったらなおさら、コーズを旅に連れてなどいけない。