忘却の勇者
凶悪な魔物共を薙ぎ払う姿は、まさにこの世へ舞い降りた気高き勇者。
勇者はたった一人で魔王と挑み、魔王の胸元に刃を突き立てた。
魔王の敗北。
人々は勇者を敬い称えたが、また勇者の傷も深かった。
勇者はほどなくして、この世から旅立っていった―――
それから十年。
致命傷を負った魔王であったが、長い月日の中で傷を癒し、力をちゃくちゃくと取り戻し再び表の世界へ現れ始めた。
影を潜めていた魔物たちも、次第に姿を現し村里を襲い始める。
再び悲劇を起こしてはならぬ。けれど魔王を倒せる者は、勇者の血を引く者のみ。
だがそれは叶わぬ夢。
勇者の血筋を引くものは皆、魔王の部下たちによって全て殺されてしまったのだから―――