忘却の勇者

「あ、そうだ。お兄ちゃんの目が覚めたらこれを渡してください」


そう言ってオレオに手渡したのは、異形な姿をした漆黒のカギだった。


カギに麻紐を通して切れ目を結び、簡易なネックレスとなっている。


「これは?」


「我が家に代々伝わる神器と呼ばれるお守りです。あらゆる呪縛を解き放つ力を持つと言い伝えられてるんですよ」


「そっか、わかった。必ずコーズに渡しておくね」


コートのポケットに収める。


旅の支度は整った。


「お兄ちゃんのこと宜しくお願いします。どうかお気を付けください」


「うん。何があってもコーズは僕が守る。だからミウちゃんは、ここで僕たちのことを待ってて」


必ずコーズと一緒に帰って来るから。


ミウは手を口に当てて何度も頷く。
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