忘却の勇者
王国の騎士団

コーズは落ち込んでいた。


世界で一番愛してやまない、目に入れても痛くないというか寧ろその痛みすら快感に変換するぐらい愛おしい最愛の妹と離れてしまったのだから。


ミウと一日以上離れたことがないコーズにとって、この遠距離生活は苦痛に他ならないだろう。


もしかしたら拷問クラスの苦行かもしれない。


とはいえもう引き返すことはできない。


いや、引き返せない。


実は何度もミウ恋しさにオレオの元から逃げ出そうと試みたが、失敗に終わっている。


コーズの足の速さはオレオに負けず劣らずのものだ。トップスピードだけなら、オレオにも勝る。


けれど無尽蔵の体力とパワーを持つ勇者体質のオレオから逃げ切れるはずもなく、さらに容赦なくそこら辺に落ちている色んな物を剛速球で投げてくるので、オレオに捕まるころにはボロボロになっていた。


さすがにこれを十回ほど繰り返せば、重度のシスコンであるコーズも諦めがつく。


というか、十回も逃走劇を繰り返した彼はかなりのアホである。
< 85 / 581 >

この作品をシェア

pagetop