忘却の勇者

荷物は全て魔具に入れているため負担は軽いが、それでも砂漠越えは甘くない。


楽をしたいのが人間の性である。


「せめてラクダかなんかいれば、幾分楽になるんだけどなぁ」


天を仰ぎながらそんなことをボヤく。


少ないとはいえ野生の魔物が潜むラハサ砂漠に、野生のラクダなんているはずがない。


「魔物がいるラハサ砂漠にラクダなんて……」


オレオは言葉の最後を飲み込んだ。


目の前に現れた茶色の巨体。


腰に大きなコブを二つ乗せたラクダ。どこからどう見ても、フタコブラクダ。


「本当にいた……」


いるわけないと言った手前、反応に困る。


良く見ると、コブとコブの間に鞍らしき物が乗せてあるのが見えた。

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