忘却の勇者
だが、ネシオル王国の騎士がなぜ砂漠に?
脳内では疑問符が溢れるが、まずは男の救出が先決だ。
今日はここでテントを張り、夜を過ごすことにした―――
王国の騎士団と聞くと、軍の中でも上の地位にいる者達だと思われがちだが、ネシオル王国にとっては例外である。
魔法に特化したこの国では、軍のほとんどが魔術師で構成されており、魔力を持たぬもしくは魔力が乏しい一般の兵は全て騎士団に所属される。
つまり騎士団と響きはいいが、末端の部隊なのだ。
とはいえ、国を守る兵士には違いない。
人もいなく魔物も少ないこの砂漠で、一人でなにをしていたのだろうか。
パチパチと焚火の心地よい音が、夜の砂漠に響く。
朝と夜では、砂漠の温度差は著しい。場所によっては氷点下にもなる。