忘却の勇者
意識が戻る。身体を起こそうとしたが全身が痛むのか、眉をひそめた。
「無理すんな。どっか痛むのか?」
「すまない。大丈夫だ」
兵士に外傷はなかったが、身体の内側が痛むらしい。
念のため医者に見せた方がいいのだが、生憎この砂漠のド真ん中に医者がいるわけもない。
コーズは今一度身体の調子を伺うが、兵士は「大丈夫」の一点張りで、笑いながら力こぶを見せてきた。
笑えるんなら大丈夫だな。
焚火で温めたスープをよそい、兵士に手渡す。
「俺はコーズ。あんた名前は? その剣、騎士団の物だろ」
「よく分かったな。私の名はシキ、これでも王国騎士団の将軍だ」
「将軍!?」
驚きの声を上げる。