忘却の勇者

それもそのはず。シキと名乗る兵士は、どう見ても二十代後半の若者だ。


将軍という地位は数ある実績を上げた兵に与えられる名誉ある称号。


とてもじゃないが将軍には見えなかった。


「驚いた。将軍っていうのは、てっきり老いぼれた爺さんばっかりだと思ってた」


「ははっ確かに将軍のほとんどは老兵が多いな。私みたいな若い者はそう多くはないから、一般的に考えれば珍しいか」


陽気に語る彼からは、失礼だが将軍の威厳は感じられない。


けれどこの若さで将軍の地位まで上り詰めたのだ。かなりの実力者であることは確か。


「ところで、なんで砂漠のド真ん中で倒れてたんだ? しかも一人で?」


「それは……」


シキの表情は暗い。


それでも彼は、刻銘に語ってくれた。


―――遡ること数時間前。
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