忘却の勇者
シキ率いる王国の騎士団の小隊は、ラハサ砂漠に出没したという謎の大型魔物に調査に出向いていた。
王国軍の主力は全て都市部の護衛で手一杯だったため、魔物の調査には騎士団が駆り出されることが多かった。
そう、あくまで調査。
戦闘訓練を積んだ騎士団達にとって、特に危険な任務ではないはずだった。
調査も中ほどまで進んだ頃、二手に分かれ別行動をとっていたシキとその部下は、例の大型魔物に出くわした。
そして結果は―――
「私意外の兵は皆死んでしまった」
俯き加減に事の経緯を話すシキからは、生気が感じ取れなかった。
部下を死なせてしまった責任からくる後悔と悲しみ、そしてなにも出来なかった己自身に対する怒りが、ふつふつと心の内から湧きおこる。
「命からがら逃げきったものの、別の小隊との集合場所から大きく離れてしまってね。水も食糧もなく倒れてしまったんだ」