忘却の勇者

助けてくれて感謝する。


頭を下げる。コーズはどう言葉を返せばいいか分からず、愛想笑いを浮かべるしかなかった。


「とにかくさ、命があって良かった。だからその、あんまり思い詰めるのは身体に悪いからさ。……うん」


「安心してくれ、私はそんなにヤワじゃない。任務に死は付きもの、彼等も分かって騎士団に入団したのだ。後悔などしていないさ」


それじゃあなんでそんな悲しそうな顔をするんだよ。


なんて、言えるわけがない。


誰よりも後悔しているのはシキ自身。


コーズも似たような経験をしていたため、彼の心境が痛いほど分かっていた。


人の命を軍人だからといってそう簡単に割り切れるわけがない。


もしかしたらシキは、簡単に割り切れないがために将軍の地位に付けたのかもしれない。


誰もが生き残れるように。少しでも死者を減らすために。そういった知恵を絞った成果なのだろう。
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