忘却の勇者

頼れる明りは夜空の月と星のみ。


勇者体質で夜目が必要以上に効くオレオにとって明りなどなくとも困らないのだが、野営の場所が分からないのは大変だ。


夜目が利くとはいえ、この暗闇で使える遠目は持ち合わせていない。


目がダメなら耳だ。と、聞き耳を立ててみたが風の音しか聞こえない。


どうやら相当遠くのほうまで来てしまったようだ。


目もダメ耳もダメ。となれば残るは鼻だが、さすがに鼻まで良いはずがない。


「……この匂い、コーンスープ!」


鼻も良いようです。勇者体質はなんでもありのようだ。


コーズお手製のコーンスープを手掛かりに、なんとか野営場所まで来た道を戻る。


まるで犬だ。勇者の欠片も見えない。


クンクン鼻を利かせながら砂漠を歩く。


歩き続けていると、目の前に大きな山が出現した。
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