忘却の勇者
普通の人間なら山と見間違えるだろうが、オレオはこれが山でないことはすぐに感づいた。
魔物独特の邪気が山から放出され、オレオの身体に眠る勇者の血が滾る。
こいつは魔物。とはいえ本当にデカイ。
オレオの何百倍という大きさ。
牛みたいなフォルムだが、身体つきは筋肉質で所々突起物が見られる。
巨大な魔物だなぁ。
オレオはその山のような身体の周囲をグルッと回った。
眠っているのかオレオの気配に気づいていない。
魔物の顔の辺りに着く。夜目を利かせてよーく除くと、顔は牛というよりも肉食獣のように鼻がすっと伸びていて口元にはするどい牙を覗かせていた。
顔の横には前足が置かれていて、こちらもまた鋭い爪をしている。
大地をも意図も簡単に抉り取ることができそうな爪に、オレオは興味津々だ。
魔物の爪や牙はアクセサリーにして身につけると、お守りの効果があるという言い伝えがこの国には古くから存在する。