カクテル
カクテルバー
「お客様、ブルームーンでございます」
バーテンダーが、上品な所作でカクテルを差し出す。
「ありがとう」
常連客の美しい女性は言い、カクテルを手に取る。
女性はカクテルを一口飲み、にこやかに微笑む。
口に出して言わなくとも、感想は明白。
綺麗だ。
こんな時間が、
誰にも邪魔されずに続いてほしい。
そう、邪魔者は、いらなかった。
そこに――、ドアの開く音が響いた。
< 1 / 59 >