僕らのお姫様
そういえばなんだか懐かしい夢を見たな。

10年前の夢。

幼なじみの妃芽が引っ越してって、西都とわんわん泣いたあの頃の夢。

窓越しに向かいの家が見える。

でも今は誰も住んでいない空き家。

妃芽の家族が引っ越してからずっと空き家になったまま。

時々管理を任されてるらしき人が掃除に来てるみたいだけど…。

「ってかなんであんな昔の事、夢に見たんだ?俺…。」

机の上に飾ってあった写真立てを手に取る。

写真立ての中には幼い俺と西都、その真ん中に幼なじみの妃芽が写っている。

幼なじみの妃芽(ひめ)は俺達兄弟にとって本当に"お姫様"みたいな存在だった。

「この頃の妃芽、めちゃくちゃ可愛かったもんなぁ、10年って事は妃芽も15才だろ?きっともっと可愛くなってんだろうなぁ…。」

そういえばあの時、父さんが言ってたっけ。

大きなったらまた逢える…って。

まぁ、ガキだった俺達を慰めるつもりで言ったんだろうけど。

あの時は本気で信じてたっけ。

今はそんなの信じてないけど。

でも逢えるなら…、また妃芽に逢いたい。

俺達兄弟にとって大切な女の子だったから。

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