かさの向こうに縁あり
今だって、すごく楽しかったわけだし。


元の世界に帰りたい、なんてことをすっかり忘れていた。



「さて、おいとましますか」


「そうだな。じゃあな、妃依ちゃん!」


「妃依ちゃん、お邪魔しました~」



札を全て片付けた尾形さんが静かにそう言うと、原田さんと尾関さんは私に挨拶をした。

私も「ありがとうございました」という意味を込めて、お辞儀をした。


三人が障子を開けて部屋を出ていく。


すると、原田さんが、あっと声を上げた。



「おう平助!どこ行ってたんだ?」


「ちょっと野暮用で……っていうか」



どうやら平助が戻ってきたみたいだ。


何しに行ってたんだろう……


ふいに気になった。

別に他人がどうしようと、いつもは気にしないのに。



「……妃依ちゃんに何かした?」



平助は原田さん達に疑いをかけていた。


わざわざ自分がいない時を狙って、口説いたりしていたんじゃないか……

とでも思っているんだろう。


あくまで私の想像だけど。



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