かさの向こうに縁あり
「疑うなよっ!俺達はただ百人一首やってただけだ!」


「百人一首?……ふーん」



きっと尾形さんが持っていた箱に気づいたんだろう。

そう言うと平助はおとなしくなった。



「なんだよ。まだ疑ってんのか?」


「うん」


「あのなあ……」


「冗談だよ、冗談!じゃ、またね」



はははっと笑うと、開いた障子から平助が入ってきた。


原田さんはきっと口をぽかーんと開けたまま、突っ立っているんだろう。

馬鹿みたいに正直な彼だから、なんとなく想像がついた。


自然と目だけが笑ってしまった。

何故かひそかに笑おうとして、真一文字に結んだ口元を震わせた。



「ねえ、ちょっと……何に耐えてるの?……あ」



障子を閉めた彼が私の様子を見て、困ったような顔をしてそう言う。

その後すぐに何かに気づいて、私の隣にあった一枚の札を拾った。


最後に私が取った札だ。

あったなんて、気づかなかった……



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