かさの向こうに縁あり
――気づけば、私は涙を流していた。



夢から覚めたらしく、目を開けて障子からの光を受け止める。


そして手の甲で、知らぬ間に頬を伝っていた涙を拭う。



自分は自分でも、あれは自分ではない誰かのはずなのに……


何故泣いてしまったんだろうか?



ふーっと息を吐き、しばらく天井を見つめる。

若干混乱した頭の中を整理しようとした。



私は“誰か”で、おそらく男性はその誰かの恋人で。

しかも話は私が本来生きている“現代”ではなくて、まさに“今”の時代で。


さらに“誰か”は病気らしくて。



……何が何やら、さっぱり分からない。


というか、自分が自分じゃない夢なんて見るわけがない。

普通、夢は夢でも自分は自分じゃないの?



「あー、もう!」と心の中で面倒臭くなっていると、障子に1つの影ができていた。



「入ってもいいかな?」



聞き慣れた声への返答は、障子を開けることだとすぐに気づく。

急いで布団から出て、ゆっくりと開けた。



< 106 / 245 >

この作品をシェア

pagetop