かさの向こうに縁あり
そこにはやはり平助の姿があった。

微笑み、温かそうな朝ごはんが乗った膳を手にしている。


外の涼しい空気が部屋に流れ込む。

微かに春の匂いが吹き抜けた。



「おはよう。よく眠れた?」



私も微笑み返し、こくりと頷く。

そして彼を部屋に招き入れた。


障子を閉めている間に、平助は膳を置き、あぐらをかいた。

私も自分の布団の上にすぐに正座をして座った。



「まあ、今日は邪魔者三人組もいなかったしね……」



何かを思い出したのか、呆れたようにそう言った。


そう言われてみれば、そうだ。


何故か毎日、決まって私の部屋を覗いていた三人組がいたんだっけ。

確かに今日は来ない。

さすがに諦めたのかも……というか、何を諦めたんだろうか。


……まあ、考えるまでもないか。



色々と無駄に考えつつも、箸を手に取り、ほかほかのご飯が入った茶碗を持つ。

一口、口の中に入れれば、体中に一気に温かさが巡った気がした。



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